想像力から創造力へ
※YondemyではMissionとして「日本中の子どもたちへ豊かな読書体験を届ける」を掲げている一方で、Visionはあえて一つに限定するのではなく、メンバーそれぞれが思い描くこととしています。
わたしの好きな童話作家である安房直子さんは、「自分は物書きだけれども、物語を胸に温めている瞬間がいちばん楽しい」と言っていました。中学生のときにその言葉に出会い「とてもよくわかる」と思ったのを覚えています。現実にはない世界や、目には見えないものを「こうだったらいいな」と思い描くのが好きで、小さい頃から自然と読んでいたたくさんの「本」は、それを手伝ってくれる大切な窓でした。
もう少し大きくなり、想像したことを実際に形にしてみようと思いました。高校の委員会誌に寄稿した短い童話を、面識のほとんどない先生が「すごくいいね」と言ってくれました。そのときにじんわり広がってきた感慨は今でも忘れられません。テストで正解を書いて「いいね」と丸がつくことと、自分が考えて作ったものを「いいね」と言われることとでは、生まれてくる感情がまったく違いました。できた物語は不恰好でしたがとても綺麗で、あの作品を書けたことは、今でもわたしを深いところで支えてくれています。
文章でも、絵でも、調べたいことでも、作ってみたいモノでも……「思い描いて、形にしてみること」がそばにあるだけで、想いの籠った足跡が増え、人生は光を帯びると思います。
その土台となる想像力を、読書を通じて身につけてほしい。世界は手の届く範囲の現実だけではないと知って、自由に歩いたり走ったりしてほしい。
そしていつか、「想像したことを形にしてみよう」と思ったときに、最初の「いいね」を伝えられる存在としてお子さんたちのそばにいられたらと思います。